ライフメディアプラットフォームを展開するじげん(3679)
- 2017/5/25
- 銘柄分析
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以前の記事『春の銘柄探し』で取り上げたじげん(3679)。
派手さはないけど、手堅いビジネスモデルとシナジーのあるM&Aで順調に成長していて、オニール的指標、及びDUKE。さん的指標でも"買い"だと判断し、今は中期目線で握っています。
今回は、そんな僕のお気に入りのじげん(3679)の事業などについて分析したものをまとめてみました。
株式会社じげん(3679)
2006年6月、株式会社ドリコムとリクルートグループのジョイントベンチャーとして設立され、2008年にライフメディアプラットフォーム事業を開始し、2009年9月に商号を「株式会社じげん」に変更して誕生した企業。
その後もライフメディアプラットフォーム事業を拡大していき、設立から7年後の2013年11月にマザーズ市場に上場しました。
ライフメディアプラットフォーム事業とは
じげんグループがライフイベント領域(求人・住まい・車など)を中心に運営するサービス群を指しています。
複数のインターネットメディア・リアルメディアの情報を統合し、一括して検索・応募・問い合わせを行うことができるEXサイトや、特定の業種や地域の企業の情報をバーティカルに集約した特化型メディア、及び提携先のメディアや企業へのソリューション提供といった、複数のビジネスモデルを展開しています。
※以下の資料はすべて「2017年3月期第3四半期決算説明会 資料」より
この「ライフメディアプラットフォーム」を別の視点から見ると、複数のWEBサイトからあらゆる情報を集約し、1つのサイトにまとめるWEBサービスを提供しているので「アグリゲーションメディア」とも言えます。
これはDeNAのサービスで社会的問題になった「キュレーションメディア」と違うのか?と疑問に思う方もいると思いますが、明確に違います。
詳しい説明はじげんのコーポレートブログに譲りますが、「クライアントとの契約」及び「コンテンツの生成過程」において大きな違いがあるんです。
強みはデータベース×テクノロジー
じげんのライフメディアプラットフォーム事業は、ユーザにとっては複数のプラットフォームにまたがって一括で情報を検索できるため便利なサービスです。
一方、じげんにとってのクライアント、たとえばマイナビ、ジョブセンス、an、DODAなどの人材紹介事業者(上図ビジネスモデル内の「メディア顧客」にあたる)は、じげんのプラットフォームから「応募」を仕入れ、それに対してフィーを払います。クライアントとしては原価を抑えて安く仕入れられるに越したことはないので、じげんが安く送客できる限り、このプラットフォームを利用するクライアントも増えていきます。
じげんの強みとしては「蓄積されたデータベースの量・質」と「マッチングテクノロジー」が挙げられます。これは、ひとえに社内エンジニアのたゆまぬ努力に尽きるでしょう。
また、アルゴリズム改善でCVRも向上しているようなので、そうなればさらにクライアントや掲載案件も増え、蓄積されるデータベースも増え、ポジティブサイクルが回っていくようになります。このサイクルが回るようになると強いですよね。
目指すはサプライチェーンの垂直統合
2018年3月期以降じげんが目指す方向性として、下記資料にこのような記述があります。
情報産業においては、ユーザーとの接点が多い再構築レイヤーからコンテンツ生成に進出できている企業は少なく、拡張可能性が大きい。
これのイメージとしては、NewsPicksがオリジナルコンテンツを作成し、プラットフォーマーからパブリッシャーに拡張していったような感じで、それと同じようなことを求人領域や不動産領域で展開しようとしているのかなと想像しています。
じげんの関連会社であるリジョブがリリースした、採用サイトの無料作成ツール 「REACH-JOB」なんかは、そのサプライチェーン垂直統合の試金石になるんじゃないでしょうかね。
もう一つの成長エンジン「M&A」
上場以来、積極的なM&Aを実施してきたじげん。一番大きい案件は三光アド(総額 約31億円)でした。その次が19.8億円のリジョブ。
しかし、それは決して割高なバリエーションではなく、いろんなルートからの多数の案件を吟味・厳選した決断だった、とのこと。
買い手側としては、割高なバリュエーションを回避するのはとても重要です。このように案件を厳選できる人脈を構築していることも強みなのですが、もっとすごいのがPMI(※)。
※PMI:Post Merger Integration
M&A後の統合プロセスのこと。新しい組織体制のもと、シナジーを具現化するために、企業価値の向上と長期的成長を支えるマネジメントの仕組みを構築、推進するプロセス全体を指します。M&Aの成否はこのPMIの巧拙によって決まる、と言われるほど重要なもの。
じげんは、あまり目立たないけど磨けば光る企業を適切なバリュエーションで取得し、統合後はPMIで価値を高めていると言えますね。
今後の成長をどう捉えるか
3年ほど前の記事ですが、成長戦略「ジゲノミクス3本の矢」に基づいた時価総額1兆円構想についての記事があります。
既存事業に加えて積極的なM&Aでレバレッジをかけていく、と語る平尾社長。
2014年8月時点で時価総額600億円だったじげんは、本日2017年5月25日終値時点で時価総額858億円と43%も増加しており、順調に成長してきていますね。
なお、ガチンコの競合は存在しませんが、僕自身、ベンチマーク企業として「価格.com」や「食べログ」を運営する株式会社カカクコム(2371)を念頭に置いています。
カカクコムの時価総額は、本日2017年5月25日終値時点で3,462億円(じげんの4倍ほど)。今の強みを活かして、M&A含め、新規事業を育成していくことができれば、時価総額3,000億円は目指せると考えています(1兆円はさておき…笑)。そして、売上、利益、時価総額をいかにして4倍にするか、M&Aの次の一手が待たれるところ。
ちなみに、現在、ちょうど第5回新株予約権の大量行使がなされている最中ですね(未行使分はあと60万株)。
これが完了すると、近いうちに次のM&Aの話題が出てくるはずで、どんな案件になるのかは気になるところ。
個人的には、不動産領域か生活領域に関する企業のM&Aかなと思っていたり、あるいは生活領域(特に中古車情報サイト関連)の海外企業のM&Aで海外進出?と勝手に妄想していたりしています。まずは、株予約権の大量行使完了報告を待ちたいと思います。
また、以下の記事を読むと、この新株予約権はやはり練りに練ったファイナンス・スキームであり、経営の強い意志が感じられます。株主としても、株主の方を向いてくれてるとも思えるので安心できます。記事もあるように、デメリットもないわけではないので、そのあたりは決算で数字を見ながら判断していければ…